次世代パワー半導体デバイス技術開発で前進、低損失と大出力を実現
11kWのSiCインバーターで、世界最高値となる電力損失約70%低減を実証
三菱電機株式会社(執行役社長:下村 節宏)は、次世代パワー半導体材料として期待されているSiC(※1)(炭化ケイ素)を用いた11kWのインバーターが、電力損失を現在主流のSi(ケイ素)パワーデバイス(IGBT(※2))を用いたインバーターに比べて約70%低減(世界最高値(※3))できることを実証しました。
(※1)Silicon Carbide:炭素とケイ素が1:1の化合物 (※2)Insulated Gate Bipolar Transistor:絶縁ゲートバイポーラトランジスター (※3)2009年2月18日現在、SiCインバーターとして
開発の背景 インバーターは直流の電力を所望の周波数の交流に変換する装置で、エアコン、冷蔵庫などの家電から電車やエレベーター、ハイブリッド自動車などのモーター制御をはじめ、工場などで使われるバックアップ用電源や太陽光発電システム用パワーコンディショナーの交流電力生成などに幅広く使われています。
SiCは、現在使われているSiに比べて絶縁破壊電界強度(※4)が約10倍と高く、高耐圧の次世代パワー半導体材料として期待されています。中でもSiC−MOSFET(※5)の低電力損失と優れたスイッチング性能を生かしたインバーターは、機器の電力利用効率を向上させ、炭酸ガス排出量削減効果をもたらすことから実用化が切望されています。
当社は2006年1月に耐圧1200V、電流10A級のSiCデバイス(SiC−MOSFET、SiC−SBD(※6))を開発し、それを用いたSiCインバーターで、3.7kW定格の三相モーターの駆動に世界で初めて成功しました。また、その電力損失が、Siインバーターに比べ54%低減されていることを実証しました。
2007年10月には3.7kWのSiCインバーターが従来のSiインバーターに比べて体積を4分の1に小型化でき、9W/cm3の高いパワー密度(※7)が得られることを実証するとともに、さらなる高出力化に向けた5.2mm角のSiCデバイスを試作して、電流値100Aのスイッチング動作を実証しました。
今回、さらに研究を進めて、SiCインバーターの低損失化と大出力化を行いました。
(※4)絶縁破壊電界強度:半導体や絶縁体において絶縁破壊を起こす最大電界強度 (※5)Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor:金属酸化膜半導体電界効果トランジスター (※6)Schottky Barrier Diode:半導体と金属の接合時に生じるショットキー障壁を利用したダイオード (※7)パワー密度:インバーターの小型化の指標で、出力電力をインバーターの体積で除した値
主な開発成果
1.電力損失を従来比約70%低減できることを実証 開発したインバーターは、世界最高レベルの低抵抗値と高速スイッチング特性を実現したSiC−MOSFETを用いるとともに、SiC−MOSFETに最適な駆動回路にすることで、電力損失を現在主流のSiインバーターに比べて、約70%低減できることを実証しました。この低減率は世界最高値です。
2.SiCインバーターとして世界最大クラスの出力11kWを実証 2007年に試作した大面積・大容量のSiC−MOSFET(5.2mm×5.2mm)とSiC−SBD(5.2mm×5.2mm)デバイスを用いて電流容量を拡大することにより、SiCインバーターとして世界最大クラスの出力11kWを実現しました。出力11kWのインバーターは産業用中容量クラスに相当します。
今後の展開 SiCパワーデバイス(MOSFET、SBD)のさらなる低損失化と大容量化を進めるとともに、2010年度を目標に、ルームエアコン、業務用エアコン、太陽光発電システム用パワーコンディショナー、エレベーターなどのさまざまな機器への適用を検討していきます。
特許 国内130件、海外22件 出願済
開発にあたって 今回の開発の一部は、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO技術開発機構)の委託研究として実施したものです。
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